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 ヒカルが欲しいと言っていたパンケーキレンズを調べ倒していたら、ボクが使うわけでもないのに欲しくてたまらん気分になってきた。性能とかどーでもよくて単にフォクトレンダーという名前のモノを手に入れたいモードにスイッチが切り替わってしまったわけだ。

 なので定価50,000円のフォクトレンダーの単焦点パンケーキレンズの中古を探した。しかし人気商品だけあってどこにも流通していない。新品だと40,000円くらいが相場みたいだが、驚いたことにほとんど値崩れせず38,000円くらいが中古相場らしい。それだけ人気があるのだろう。

 新品と中古の両サイドで探してみるがやっぱり新品は高い。43,000円で残り1個というのを見つけたが、それにしてもやっぱり高い。オートフォーカスも効かないレンズでこの値段。ヘタするとコンデジやデジイチのボディが買える…。

 3週連続でウェディングパーティーがあってかなりの出費をしている。なので名前が気に入ったというアホらしい理由で(ボクが)使うわけでもないカメラのレンズを買ってる場合でもないんだが、ゴールデンウィークは半分仕事だったりしてどこにも出掛けなかったのでその埋め合わせをしようとも思った。

 そんな気分的な背景もありつつダメ元で某量販店に電話すると新品が1点だけ在庫があるとのこと。しかも値段が39,800円ときたもんだ。調べた中では最安値。だけれども、高い。

 …が。

 ポイントが20%つくらしい。すると実質は32,000円くらいだ。中古相場が38,000円くらいだと考えるとこれは安い。

 …しかし安いけど、高い。

 どうしようか考えようと思い、電話で応対してくれた人の名前を聞いて電話を切った。

 フリーになってどうにか収入が安定してきてはいるが、タオの病気や、3週連続のウェディングパーティーや、親も高齢で病気したり仕送りしたりの出費を考えるとレンズなんか買っている場合でないことは明白だ。しかし相手はフォクトレンダーなんである。ボクが使うわけでもないんだが、こんな合体ロボみたいな扇情的な名前のガジェットがあるだろうか?

 なんでポイントが20%なのか分からないけど、春のなんとかとか、ゴールデンウィーク特別ポイント還元セール中とかそんな気がした。中古より安いんだから買うならいまだ。そう結論付けて量販店に再び電話。

 応対してくれた人に繋いでもらおうとしたら他の電話応対中で、折り返し先方から電話をくれるとのこと。

 電話を待つ。

「○○○○○○の○○ですが…」

「先ほど電話した24ですが、例のレンズを購入しようと思うので取り置きお願いできますか?」

「分かりました。お買い上げ有り難うございます」

「確認ですがまだ在庫ありますよね?」

「確認してきますので少々お待ちください」

 しばしの間。

「確認できました。在庫ございますのでお取り置きしておきます」

「それと確認ですが39,800円で、ポイント20%つくんですよね?」

「はい、そうです」

「それと最後に確認ですが、商品はフォクトレンダーのウルトロンの40mmのf2でSL2でニコンマウントの黒ですね?」

「はい、そうです」

「SL1と2があるみたいで、さらにニコンマウントとペンタックスマウントがあるみたいですが、間違いないですね?」

「はい。2のニコン用で黒で間違いないですよ」

「分かりました。そうしたら1時間以内には取りに伺いますのでよろしくお願いします」

「そうしましたら2Fのレジカウンターに商品を取り置きますので、そちらで24様のお名前を仰って頂ければすぐに商品をお渡しできるようにしておきますので、よろしくお願いします」

「分かりました。有り難うございます」

「それではお待ちしています。有り難うございました」

 …で慌てて家を出たのがお昼少し前。

 バレットパーキングに車を預けて量販店に向かうが、お腹が空いていたので昼ご飯を食べようかどうしようか迷う。しかしフォクトレンダーと早く対面したいのと、早くレンズを買って帰れば午後から出掛けて写真を撮れるという気持ちが急いて、銀行に寄ってお金を降ろしてからそのまま量販店へ。

 電話で言われた通りに2Fのレジカンターで名前を告げると、電話応対してくれたのとは別の名札を着けた人がレンズの箱を出してきてくれる。

「商品の確認をしてください」

 と言われて箱を空けるとブラックとシルバーのツートンカラー。

「あれ!? これってSL2じゃなくてSL1じゃないですか?」

 カタログを見倒していたボクはひと目でそれがSL2でないことを見抜いた。

「申し訳ありません。確認してきます」

 と、レンズの箱を持って奥に消える店員さん。

 待つこと10分。

「申し訳ありません。確かにこれはSL1で、当店には生憎とフォクトレンダーの在庫はこれ1つとなっていまして…」

「確かに最後の1つと言われたので取り置きしてもらったんですよ…」

「他店舗に在庫がないか確認してきますので少々お待ちください」

 待つこと10分。

「有楽町と横浜に在庫があることが分かりました」

「そうですか。それは良かった」

「当店のスタッフに取りに行かせますのでお時間を頂ければと思いますが、レンズを使うのはいつでしょうか?」

「買って帰って午後から出掛けようと思ってたんです」

「そうですか…。そうしましたら重ね重ね申し訳ありませんが、スタッフが取りに行く往復で1〜2時間見てもらえれば…」

「1〜2時間だったら潰します」

「それも申し訳ないので、夕方頃でよろしければお客様のご自宅までお届けに上がりますが…」

「いえ結構です。午後から使いたいので時間潰して待ちます。それが最短でしょうから」

「かしこまりました。手続きをして来ますので少々お待ちください」

 …ということでその手配にかかる店員さん。

 ここでヒカルから

「SLの値段だから安かったんでSL2だったら高いんじゃないのかな?」

 と疑問が提示される。確かにそりゃそうだ。

 さっきの店員さんを探して

「すいませんがSL2だと値段違うんですか?」

 と聞いて見ると48,000円とのこと!!

「10,000円も高いじゃないですか!」

「はい。電話でお伝えしたのはSL1の値段で、こちらはSL2となっていますので…」

「うーむ…」

「しかしお客様。10,000円ではなくて8,200円の価格差です」

 と電卓を叩く店員さん。

 この辺りでイラッとするが大人なので我慢。大体なんでそんなことで電卓叩いて10,000円じゃなくて8,200円だと訂正されにゃいかんのじゃ!?

「色々と調べて39,800円というから安いなと思って買いに来たんですよ…」

「はい。申し訳ございません」

「ポイントも20%だって言うので…」

「申し訳ありませんが、SL1の方は20%のポイント還元ですがSL2の方はポイント10%となっていまして…」

「10,000万円というか8,200円も(いい直しているあたりが弱気)高くて、しかもポイントが10%なんですか!? それを有楽町まで取りに行ってる間、待ってないとダメってのはひどいですよ」

「はい。まことに申し訳ありません」

「車だって駐車場に入れてるので1時間800円くらいの駐車料金かかるんですから、少しは割引とか、してもらえないんですかね?」

「SL2をSl1の値段でお売りするのは少し難しい状況でして…」

「そんなことは言ってないですよ。少しなんとかなりませんか?」

「検討して参りますので少々お待ちください」

 そう言って店員さんは再び奥に消えた。

 ここでボクが考えた妥協案はSL2を数千円引きくらいにしてもらってポイントは20%つけてもらうというあたり。

 それくらいが妥当じゃないかとヒカルと相談していると、さっきの店員さんが戻ってくる。

「お客様、お待たせいたしました」

「はい」

「実は現品が有楽町でもなくなってしまいまして、新横浜の方の店舗に取りに行ってきますので2時間くらいお時間をください」

「はい。それは構いませんが値段の方はどうなんでしょう?」

「この近辺ですと駐車場が1時間800円ですので、その2時間分ということで1600円引きにさせてもらいますが、どうでしょうか?」

「はぁ!?」

 ここでもかなりイラッとしたが、クレーマーみたいになりたくないので冷静に応じる。

「品物を取りに行ってる間の駐車場代を出してくれるのは有り難うございます。しかしそちらの手違いで2時間待たされて、しかも10,000円近く商品が高くて、さらにポイントも20%と言われたのが10%しかつかないってのはどうなんでしょう?」

「まことに申し訳ありません…」

 この人はたまたま対応してくれているだけで何も悪くないので、電話対応してくれた人と話しをした方がいいかと思ってそれを遠回しに切り出してみる。

「SL1とかSL2とか、ニコンマウントやペンタックスマウントがあってややこしいから、電話したときも最初と2回目にちゃんとSL2のニコンマウントか確認したんですよ」

「はい。電話で応対させて頂いた担当に確認したところ2というのがお客様の指定だったと申しておりました」

「それでなんで1なんですか?」

「型番のSL1とSL2のことではなくてf2のことだと勘違いしてしまった様です…」

 ボクが買いたかったのはフォクトレンダーのウルトロンの40mmのf2でSL2でニコンマウントの黒。しかし取り置きされていたのはフォクトレンダーのウルトロンの40mmのf2でSLでニコンマウントの黒とシルバーのツートンカラー。

 向こうが勘違いと認めて詫びてる状況なんだからどう考えてもボクが有利。電話対応した担当者と話そうとしたら、その人が勘違いしたと認めてるくらいだから、もめ事に発展させないためにも電話対応した人は出てこないと見た。

 ここで電話対応した○○さんが出てきて「勘違いして申し訳ありません」とちゃんと詫びてくれたら少しは気分も変わるんだろうけど。

 対応してくれている人では埒が明かないから責任者を呼んでもらおうかと思ったが、相手のミスにつけ込んで権利を勝ち取るみたいなことは流儀に反する。ミスなんか誰にでもあることなんだから、ゴールデンウィークの最終日の予定が吹っ飛んだくらいで騒いでるのも大人げない。誰か怪我でもしてるなら別だけど。

 待ち時間2時間分の駐車場代1600円引きにするのが、この人の権限の限界なんだろう。

 そんなこと考えているうちに気分が冷めた。

「もういいです」

「しかしお客様…」

「そちらの勘違いで品物はないし、値段は10,000円近く高いし、ポイントは20%と言ってたのが10%だし、さらに2時間待たなきゃダメというのは、これはずいぶん酷いということだけは○○さんにお伝えください」

「それはもう、きつく言い聞かせておきます」

「それで結構なので、商品はもう要りません」

 …というと、その人が急に名刺を出してきた。

 見ると売り場の主任だった。ちゃんと名乗ることにその人の誠意を感じた。

「名刺を頂いても仕方ないんですけど…」

「いやしかし、また何かありましたら、いつでも私に仰ってください」

「また何かあるんですか?」

「それは分かりませんが、今回のご迷惑は本当に申し訳ありませんでした」

「はい。では失礼します」

 電話担当の○○を出せとか責任者や店長を出せと怒りをあらわにすれば、もう少しこっちが有利な条件は引き出せた気がする。

 しかしそんなことをしても、レンズを使う度に、人の弱みにつけ込んだ自分の卑しさがフィードバックされる。

 まるでヒカルがGRD2をなくしたときと同じ感覚(^^;

 カメラ運ないなと思っていたら

「嫌なことがあればいいことあるよ」

 とヒカルが言ってくれた。

 本当にそんなもんだと思う。

 随分と大人になったなーと思いながら駐車場まで歩くと、駐車料金が800円だった。

 それまで自分で払うのかと思ったら、またちょっとイラッとした。

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