30年振りくらいでカレーの王様でランチ。
…と書いて、それは間違いだと気づく。
10年くらい前。南青山に住んでるときに千駄ヶ谷の事務所に通っていた。そのときにカレーの王様@外苑前で何回かカレーを食べたことを思い出したのだ。
なので厳密には10年振りくらいかも知れない。しかしそこに厳密であることを求める人は世界に1人もいないので、30年振りということでも問題はない。10年とか30年とかどっちでもいいのだ。
なぜなら話しの骨子はそこではない。
10代の頃、友達と新宿で映画を観ると、いつも決まってカレーの王様@新宿歌舞伎町でカレーを食べた。
なんであんなにカレーの王様でばかり食べていたのか思い出せないが、中学生くらいの男子に特有の「歌舞伎町で映画を観たら絶対にカレーの王様でカレーを食べる」みたいな掟というか、ローカルルールがあった気がする。
もしくは、これまた中学生くらいの男子に特有の「誰が最初に全メニュー制覇するか!?」みたいな競争をしていた気もする。
どちらにしても小梅ちゃんみたいに甘酸っぱく、どうでもいい話しだ。
なぜなら話しの骨子はそこでもない。
当時は酒を呑めないので水ばかり飲みながら、将来は映画の仕事をしたいとか、そんなことばかり話していた。カレーの王様なのにカレーの話しじゃないところが意味不明ですが、なにせ映画終わりの映画好きの集まりなのだ。
仲良しの5人くらいの中では、ぼくが一番映画の仕事をする可能性が高いと言われていた。なんの根拠もない、これまた甘酸っぱい話しである。
甘酸っぱいついでに言えば、5人のうちの1人くらいは、誰か本当に映画の仕事をするんだと思っていた。冗談交じりに「お前が映画監督になったら、オレを映画に出してくれ」とか「お前が映画撮ることになったら、音楽やる」とか「共演相手は伊代ちゃんがいい」とか「伊代ちゃんじゃなくてキョンキョンがいい」とか言い合っていた。伊代ちゃんにしたら迷惑な話しだ。
…が、当時は冗談でもなかった。
何しろ若くて、世間知らずで、青二才で、半人前で、お金がなくて、時間ばかりあって、本気だったのだ。
しかしぼくを含めて、誰も映画の仕事なんかしていない。
半分冗談、半分本気で言ってることや思っていることがあっても、未来に実現してることなんか予測できるわけもないし、ぼくなんかは、この歳になっても3年後すら分からん。未来ってのは不確定なものなのだ。
不確定だから素晴らしい。そして面白い。
偶然が彩りを添えるかに見える時の流れも、本質的には必然の連続だ。
しかしぼくの視点で時間を捉えれば、30年前に予測できなかった未来と同じく、30年後の未来も不確定なのだ。
だからヘタすると、30年後には当時の仲間の1人くらい、本当に映画の仕事をしている可能性だってある。
なにせラーメン王(自称)がカレーの王様でランチしてるのだ。こんなどうでもいいことは30年前には予想不能。
そんなことを語り合ったカレーの王様@歌舞伎町店。しかしWEBの店舗案内を見たらなくなってしまった様だ。
小梅ちゃんみたいに甘酸っぱい思い出も、カレーだけに辛口&スパイシー。
人生ってのは、おじさん好みの辛口なんである。