暑からず寒からずのいい季節なので、ぼくが仕事してるのを尻目に1日爆睡していたタオ。
ぼくも眠くなったので、我が物顔で寝てるタオの邪魔にならない様に気を使いながらベッドに入る。
しばしうとうと…。
そしたらタオが急に起きてベッドサイドの観葉植物の鉢の土をムシャムシャ食べ始めた。
胸ヤケしたりミネラルが足りないときに犬は土を食べる。
タオもたまに少しだけ土を食べるので、夢うつつの中でそのまま放置。
そしたらタオがベッドから飛び降りてリビングへ。
水でも飲むのかと思ってたら、まるで丼メシをかっこむ様にリビングにあるもっと大きな鉢の土を食べ始めた。
夕飯に茹でたまごを上げたので胸ヤケしてるのかと思い、ぼくもベッドを出てリビングへ。
「どした? 胸ヤケしてるなら、土なんか食べずに水を飲めよ」
と声をかけて新しい水を入れてやる。
しかし水には全く興味を示さずに、そのまま玄関へ直行するタオ。
ふみふみと悲しそうに鼻を鳴らして散歩の催促。
お腹が痛いのか、気持ち悪いのだろう。
仕方ないので寝間着のままタオと外に出る。
家の前でおしっこを済ませてから道端の草を食べようとするタオ。
犬は胸ヤケしてるときに草を食べて胃の中のモノを吐く。
だから草を食べさせて吐かせればいいが、うちの周りは住宅街で犬を飼っている人が多く、道端の草には犬のおしっこがかかっている。
そこから病気がうつるそうなので、道端の草を食べさせるのはあまりよろしくない。
近くの空き地まで行けばタオが食べる草が生えてるんだが、何せ朝の3時半に寝間着のままそこまでは行ってられん。
「寝間着だからそんな遠くには行けないぞ。外の空気吸えば気持ち悪いのも治るから、近所を1周して帰ろうぜ」
とタオに言い聞かせたら、やや不満気ながらも近所1周で家に帰ることに合意してくれた。
寒くてどうにもならない冬の早朝を思い出させる晩秋。
新聞配達前の寝静まった住宅街。
澄んだ空気。
曇り空をバックに浮かび上がる恵比寿ガーデンプレイスの煌めく灯り…。
外の空気を吸って落ち着いたのか、家に戻ったらそのままベッドでスヤスヤと寝息をたて始めた。
中途半端な時間に起こされたのには参るが、あと数年の寿命だと思うとこうして一緒にいられる時間は尊い。
タオに連れ出されて、2人して夜の世界に包まれていたことは忘れない。