脇道に車を停めてタバコを買いに行ったヒカルを待っていると、ラジオからお酒を呑めないソムリエがどうとかの話しが流れる。
「買ってきたよ」
「ありがとう。…いまさ、ラジオで酒を呑めないソムリエの話しをしてたんだけど、そんなの嫌だよな」
「なにが?」
「酒を呑めない人にワインを勧められても信憑性なくない?」
「そーお?」
「だってこの料理にはこのワインが合うといくら勧められても、その人は呑めないんだから、その料理でそのワインは呑まないんだよ。そんなのなんだかインチキっぽくない?」
「そんなこと言ったらさ、ピアノを弾けない人にピアノの調律頼みたくないみたいにならない?」
「なるほど」
「調律のベテランが、ピアノ弾くのが巧いとは限らないもん。ワインの味の特徴を覚えてそれが料理とどう合うかを説明するのがソムリエの仕事なんだから、別にお酒の呑めないソムリエがいてもいいんじゃないのかな」
「何だかいまいち納得できないけど、その例えは説得力がある。冴えてるじゃん」
「あっ!」
「どした!?」
「自販機で買ったタバコを取ってくるの忘れた。さっきの場所にすぐ戻って!」
◇
冴えてないじゃん。